● ルール変更、有利不利の判断は早急 要は分かりやすく勝つこと
武道には「後の先」という観念がある。
後手を引いたようで、実は先手を取っている−といった勝負の呼吸だ。
脚取り技にもその観念は息づいていて、例えば内股に対して、
すくい投げの返し技があるから攻防の均衡が成り立ってきた。
「脚取りを禁止すれば、確かに攻めの柔道が主流になる。
しかし、技の制約で柔道本来の味がなくなる恐れもある。奇襲とか逆転とか」。
ロンドン五輪後から熱を帯びたルール改正議論に、
全日本柔道連盟の上村春樹会長はこう警鐘を鳴らしてきた。
柔道文化の足場を脅かしかねない流れだからだ。
短期的にみれば、「脚取り禁止は日本勢に有利に働く」と別の柔道関係者。
ただし、2010年に脚取りの“一部禁止”が導入された際にも同じ声はあった。
だが、ロンドン五輪で男子が金メダルなしに終わったことを思えば、
4年後の有利不利を論じるのは早い。
現代柔道が高速化、複雑化する中で試験導入される1人審判制と無制限の延長戦、旗判定の廃止。
「正しく組み、一本を取る技」(上村会長)が、より重視される時代になりそうだ。
結局、日本勢が生き残る道は技とおう盛なスタミナを身につけ、分かりやすく勝つしかない。
上村会長は「3大会に1度の検証は必要で、(改正ルールを)さらに変えるとか、
なくす決断も求めたい」と、安易な本格導入に待ったを掛けるのも忘れなかった。