● 力比べ決着 増加懸念 柔道新ルール 脚取り完全禁止
国際柔道連盟(IJF)が来年2月から新ルールを試験導入する。
2010年のルール改正から1段階進め、脚取りは完全禁止。
畳の上で裁く審判員を3人から1人に減らし、映像を見る補佐役を2人置く。
寝技は現行より5秒少ない20秒で一本、15秒で技あり、10秒で有効に変更。
旗判定は廃止し、延長戦は勝負がつくまで続ける。
とくに選手が対応を迫られそうなのが脚取りの完全禁止だ。
全日本柔道連盟(全柔連)審判委員会の西田孝宏副委員長は
「(上半身しか攻防に使えない)レスリングのグレコローマンみたい。
小さい者が大きい者を倒せなくなってしまう」と、力比べで勝敗が決まる試合の増加を懸念する。
2日に閉幕したグランドスラム東京大会でも、積極的に寝技を仕掛けるなど、
新ルールをにらんだ攻防が見られた。
男子60キロ級で決勝を肩車で一本勝ちした高藤直寿(東海大)は
「背負い投げ、寝技をしっかりつくらないと」と反省しきり。
井上康生監督も「高藤は大幅なモデルチェンジが必要」と、くぎを刺した。
ロンドン五輪で男子66キロ級の海老沼匡(パーク24)の試合で旗判定を覆すなど介入が目立ち、
今年の流行語大賞の候補にも入ったジュリー(審判委員)。
その権限は、大きく制限される。審判にはまず補佐役が意見し、
ジュリーは大きな混乱やミスがない限り介入しない。
だが、「補佐役2人が口を出すなら同じこと。外から何度も判定が変えられたら、
見ている人は『あの審判はなんなんだ』ということになる」と西田副委員長。
畳の上で目を光らせる人数が減ることで、余計に判定変更が増えて混乱する危険性もある。
新ルールは来夏の世界選手権(リオデジャネイロ)まで試し、
結果を見て、本格導入するかどうかを決める。
IJFのビゼール会長は「われわれは時代に合わせ、柔道の伝統、
精神にできるだけ近づけるようにルールを変えている」と説明している。