● 決勝攻めきれず悔い 五輪柔道「銀」杉本選手に聞く
8月のロンドン五輪柔道女子78キロ超級で銀メダルを獲得した杉本美香(兵庫県伊丹市出身、コマツ)。
両膝の前十字靱帯断裂など度重なる大けがを乗り越えてたどりついた初舞台で、
気迫みなぎる戦いを見せた。延長の末に旗判定で惜敗した決勝には、今なお悔いものぞかせる。
柔道人生の集大成と位置付けた五輪を振り返ってもらった。
初戦の2回戦から2試合連続で豪快な一本勝ち。気迫が表れていた。
「支えてきてくれた家族や仲間に感謝を伝えるためにも、勝ちたいと無意識に思う状態になっていた。
一本を絶対に取りたかった。(柔道競技の)最終日だったのでチームみんなの分も、という気持ちも大きかった。
本当にどこよりも誰よりも練習し、チームで戦っていたので」
北京五輪覇者で最強の難敵と目された☆文(中国)が準決勝で敗れた。心理的な変化はあったか。
「『あ、負けたんや』という感じで意識はしなかった。『よっしゃ』と思ってしまうと、自分の準決勝すら勝てなくなる。
目の前の相手だけを見る、と決めていた」
決勝の相手は一昨年の世界選手権などで下しているオルティス(キューバ)。
積極的に仕掛けられなかったのは、序盤に得意の払い腰を返されそうになった影響か。
「もう返し(技)を狙っている(気配)というのがむちゃくちゃあった。
見ている人は『なんでやねん、はよ(技を)かけろや』という感じになったと思うんですけど。
組んでいて体重のかけ方が1センチでも違ったら技がかかるか(返されるか)どうかが変わってくる」
「でも思い切りいけなかったのが負けた原因だと分かっている。
勝ちたい気持ちが出すぎて、不用意にいっては…と(慎重になりすぎた)。
自分の実力とか気持ちとか、試合日に照準を合わすこととか、全部が一致しないと優勝は難しい」
世界選手権など国際大会の経験は豊富だが、初の五輪はどんな舞台だったか。
「味わったことのない雰囲気や空気で言葉では言い表せない。
あそこに立った者にしかできない体験をさせてもらった」
五輪から1カ月あまり。今の心境は。
「メダルを持って帰ってくることができ、ほっとしている。支えてくれた人たちに報告ができて、本当によかった。
金メダルを目指して人生を懸けてきたが、銀メダルだから得られたものもある。(自分に足りなかったものなど)
何かを教えてくれていると思う。子どもたちにも、自分と同じように柔道で感動してもらいたい。
(将来、指導者などとして)経験を生かせるんじゃないかと思っています」