● 柔道のナショナルチーム指導者
不振に終わったロンドン五輪の柔道日本代表チームで、
男子を率いた篠原信一監督、女子の園田隆二監督が、
ともにリオデジャネイロ五輪に向けた4年間も指揮を執る希望を述べているという。
全日本柔道連盟の吉村和郎強化委員長もかねて再チャレンジの機会を与える意向を示しているから、
“アラフォー”の両指導者の続投もある情勢だ。
1964年東京五輪で採用されて以降、栄光の歴史を築いたニッポン柔道の中心をなす男子が、
先のロンドン五輪を金メダル「0」個で終えた。
五輪史上初めての屈辱と衝撃を関係者以外にも与えた大会となってしまっただけに、
男子ほど目立たなかったが全体的に振るわなかった女子も含めて、
指導者の交代なしとなれば世論の疑問を呼びかねない。
柔道のように、これほどナショナルチーム指導者の責任が問われるスポーツも珍しい。
同じお家芸では、体操が1996年アトランタ、2000年シドニーの両五輪当時に不振をきわめたが、
体操協会全体の強化態勢が問題視されることはあっても、
監督やコーチ個人の責任が声高に問われるようなことはなかった。レスリングや水泳も同様。
女子選手にシーズン世界最高記録が続出してメダルラッシュと
期待された競泳がよもやの「0」個に終わったアトランタ五輪で、
最も叩かれたのは女子エース格の千葉すずだった。
銅メダル1個、スタッフのミスで選手が計量を受けられずに
失格という失態を犯したバルセロナのレスリングでは、
福田富昭・日本レスリング協会五輪強化実施本部長(現会長)が先頭を切って頭を丸めて反省の意を示した。
個人競技の不成績で責められるのは「協会」や「連盟」、あるいは選手本人が常なのだが、
柔道の場合、「全柔連」よりも批判の矛先は監督に向かいがちである
(といってもやっているのはメディアなのだが…)。
アトランタ五輪でも、序盤の重量級から金メダルを逃す選手が続くと、
山下泰裕監督(当時)の進退が一部で報じられた。
柔道への期待が大きいことの裏返しと言えるのだが、
重圧がのしかかる当人たちはたまったものではないだろう。
25日の朝日新聞でかつての「女三四郎」山口香氏が、
別の観点からナショナルチーム指導者が、選手の「育成」まで手がけるようになった現状についてこう提言している。
「実際に選手を育成したのは所属チームなので、指導の一貫性を保てなくなる。
競泳やマラソンのように所属チームのコーチが代表コーチを兼ねる形で、
現場で指導する新たなシステムを作るべき。
ヘッドコーチ、つまり代表監督の仕事は、海外選手の力量を確認し、ルールの変更に気を配り、
海外チームとの合宿をアレンジする、といった『マネジメント』にあります」