● 全日本学生柔道体重別選手権
山梨学院大女子3人が決勝に進出3人とも優勝
加賀谷再優勝、連悲願達成、山崎衝撃優勝
平成24年度全日本学生柔道体重別選手権大会2日目(最終日)の9月30日、
東京・日本武道館で残りの男女各3階級の戦いが行われた。
初日に主将の山部佳苗が78s超級2連覇を達成したのに続き、2日目も山学大女子は爆発した。
48s級の1年山崎珠美が4試合すべて一本勝ちの快進撃で優勝、
浅見八瑠奈2世誕生と柔道界に衝撃が走った。
52s級の加賀谷千保は1年のこの大会で優勝したあと、ケガに泣き苦しんだが、
昨秋の講道館杯で復活優勝し、4年最後の今回完全復活優勝を果たした。
台湾からの留学生連珍羚は、来日3年目で悲願の優勝を達成させた。
山梨学院は、女子7階級のうち4階級を制覇する快挙を演じ、
78s級の西田香穂が準優勝、78kg超級の町純香と男子66s 級清水健登、73s級中村剛教の3人が3位入賞。
創部最高成績を上げ、柔道界に"地方私学の雄山梨学院"を強烈にアピールした。
≪48s級決勝 山崎珠美vs塚原唯有(環太平洋大)≫
山崎珠美(1年 三浦学苑)は、高校3年だった昨年全日本ジュニア選手権に優勝し、
高3で講道館杯2位の実績を作ったニューフェイス。
普段は笑顔があどけない158cm・48kgの小柄な体だが、
畳に上ると表情が一変して勝負師の顔になる。
組み手争いに慎重な選手が多い中では異色な存在、どんどん前に出て、奥襟をガッとつかんで、ガンガン投げに出る。
このスタイルが見事にはまり、初戦から3試合とも1分前後で一本勝ちを収め、
あれよあれよと言う間に決勝に進出した。
そして、決勝も、開始1分20秒に大内返しを決めて、いとも簡単に優勝してしまった。
山崎珠美選手は「今年の全日本ジュニアは負けてしまい(2位)悔しい思いをしたので、
今回は絶対負けたくないと思って臨みました。
追い込みが足りなかったと思い、稽古する時に試合を想定して一つ一つ練習して来ました。
山梨学院大に入り、素晴らしい先輩がたくさんいる中で柔道に取り組めることは幸せなことだと思います。
奥襟を取る柔道が自分の柔道ですが、
大学に入ってからは、外国の選手とも戦えるように前襟を持つ柔道にも取り組んでいます。
将来は浅見八瑠奈先輩とも戦える選手になりたい」。すごい新人が表れた。
≪52s級決勝加賀谷千保vs黒木美晴(環太平洋大)≫
加賀谷千保(4年 藤枝順心)は、高校生の時に世界ジュニア優勝、
大学1年のこの大会で優勝、国際大会優勝など輝かしい実績を作ったが、
1年冬の国際大会で股関節を負傷してから勝てなくなり、スランプに陥った。
2年間いい成績が残せず「もう柔道をやめよう」と思うほど苦悩した。
復活の足がかりとなったのは山学大の後輩だった。
左組みの加賀谷は、元来、右組みの選手を苦手としていたが、
軽量級の後輩に右四つの選手がたくさん入部して来て、苦手意識を克服する練習機会に恵まれた。
昨年11月の講道館杯で優勝を飾り復活、4年となって向かえたこの大会で1年時以来の2度目の優勝を目指した。
決勝の相手黒木美晴は苦手の右組みだった。しかし、後輩を相手に練習して きた成果が出た。
残り1分34秒に有効を奪い、そのまま組み負けずに黒木にポイントを与えず勝利した。
加賀谷千保選手は「準々決勝で対戦した渡邊美樹さん(東海大)には一度も勝ったことがなかったし、
準決勝の谷本和(環太平洋大)さんは6月の団体戦で負けた相手、
後輩たちに練習相手になってもらい研究して来た甲斐があった。
年で優勝したあと成績が上らず、やめようかなと思った時もありました。
この大会で結果を出せたことで、山梨学院大学が素晴らしい環境だということを証明できたと思います。
団体戦でチームに貢献し、講道館杯で2連覇を目指したい」。加賀谷完全復活だ。
≪57s級決勝連珍羚vs武井嘉恵(筑波大)≫
連珍羚(れん つぇんりん 3年 台北錦和)は小学校3年で柔道を始め、台湾では高校チャンピオンになった。
日本留学のきっかけは08年の嘉納杯、試合を見た山部伸敏監督から
「日本で練習すればもっと強くなれる」と勧誘され、海を渡った。
台湾代表メンバーとして世界選手権へはロッテルダム、東京大会と2大会連続出場。
香港で開かれた東アジア大会では銅メダルを獲得した。
1学年下の妹連珮如(れん ぺいるー 2年 台北錦和)も姉を追い山学大に入学、
姉とともに樹徳館で稽古に励んでいる。昨年の連は、この大会準優勝だった。
リベンジを胸に決勝戦に臨む連に、西田総監督は「前の2人は勝ってるぞ、集中して行け」と檄を飛ばした。
準々決勝・準決勝は強さを発揮し危なげなく 勝ち進んだが、決勝はやや硬くなった。
開始2分に有効を奪い有利に立ったが、そこから消極的になった。
ポイントを取ったことで守りに入り、攻めの姿勢が影を潜めた。
残り10秒に指導1を取られたが、何とか逃げ切り、悲願だった優勝を勝ち取った。
連珍羚選手は「西田先生から試合後、ポイントを取ってからは何だと怒られました。
去年は決勝で負けて悔しい思いをしたので本当に嬉しいです。山梨学院に来て人生が変わりました。
チームの団体戦に貢献して、来年の台湾選手権で優勝して、台湾代表として世界選手権に出場しメダルを取りたい」。
すっかり上手くなった日本語で夢を語った。
この他の山学勢は、女子57s級の藤村美和(2年 東北)がベスト8の5位に入り、
山梨学院から11月の「講道館杯全日本柔道体重別選手権」に出場する選手は、
台湾国籍の連を除き、女子は山部佳苗、町純香、西田香穂、加賀谷千保、山崎珠美、藤村美和の6人、
男子は、中村剛教、清水健登の2人となった。
山部伸敏女子監督は「結果的に4つ取れたのは初めて、優勝した選手は勝負強く力を出し切ってくれた。
逆に、勝負どころで逆転負けした選手もいた。実力が同じレベルの者の戦いだから、勝負はやって見なければ判らない。
練習量と精神力が勝負を分ける。負けた選手も、勝った選手も、次に向けて自分を見直してほしい」と戦いを振り返った。
西田孝宏総監督は「連と加賀谷は出だしが良くなかったので心配したが、しり上がりに調子を上げて優勝してくれた。
山崎は思い切りのいい柔道をする選手、接近戦の柔道なので勝つ時も負ける時も派手だが、
攻めの柔道スタイルを変えないでほしい、世界を狙える選手、浅見を脅かすぐらいになってほしい。
男子は、今日はある意味力通り、昨日の66s級と73s級で最低一つは優勝してほしかった。
次の団体戦には、男女ともしっかり調整させて臨ませたい」と大会を総括した。